研究概要 |
前年度に引き続き、銀河団を含めた視野を30程、一月に数回のモニター観測を7つの公共天文台(西はりま、佐治、みさと、綾部、美星、かわべ、各天文台、および久万高原天体観測館)にある口径60cmから1mの望遠鏡を用いて行っている。超新星が発見されたという報告はなかった。一方、土居が主研究者となって提案したSuprime-Camを用いた超新星探索の観測が「すばる」によって前年度に引き続き行われた。6つの超新星が発見され,どれもが赤方偏移z^-1付近の遠方のIa型超新星であることがわかった。これらの超新星は宇宙論パラメータを決定するための貴重なデータとなると思われる.今後も土居がアメリカの研究者と協力してすばるとHSTを用いた遠方超新星探索の研究を発展させていく予定である。理論的な研究の成果として銀河初期の星形成史を記述するモデルを構築した。このモデルを用いて我々の銀河にある金属欠乏星の諸性質を説明するごとに成功した。さらに、我々の銀河系に最初に誕生した星は分子雲の中を移動するうちに分子雲中の金属によって汚染され、金属量に対する特有の分布を持うようになる事を指摘した。この分布は観測的に検証可能である。また我々の銀河だけでなく近傍の矮小銀河にもそのモデルを適用し、観測結果を説明するとともに星形成史に関する情報を抽出する事にも成功した。さらに、このモデルを使って球状星団の形成も議論できる事が分かった。球状星団は星形成を行っている分子雲同士がほぼ正面衝突した時に作られることがわかった。その相対速度は数十km/s以上でなくては行けない事も理論的に示した。このモデルを発展させることによって、銀河での超新星出現率を予測し観測と比較する事が可能になる。この研究課題で作成された複数の撮像データから変光天体を探し出すソフトはいくつかの研究で利用されて、さらに発展が期待できそうな現状である。
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