電波銀河における相対論的ジェットの物理的性質とそのバルクな加速機構理論的な検討を行った。 1.高温降積円盤中での電子陽電子対平衡を、円盤からの対の逃散も含めて一層近似のもとで解き、降積率が大きい場合には円盤で散逸されたエネルギーの大部分が対の内部エネルギーと運動エネルギーを転化することを示した。電子陽電子対は高温イオンからクーロン衝突により相対論的な温度にまで加熱され、自らの圧力勾配で加速されジェットを作ることになる。この機構は重力エネルギーの解放とジェット形成との関係をはじめて具体的に結びつけた点で、意義が大きい。 2.降積円盤から放出される電子陽電子対の流体力学を一次元問題として定式化した。これにより円盤から生み出されるジェットの運動学的光度をより正確に評価する予定である。また、ジェットのバルクな加速機構が熱的なものである可能性が強いことを論じ、ガンマ線バーストのファイアボールモデルとの類似性や異同を論じた。 3.相対論ジェットのエネルギーのうち、中心部で輻射に転化されなかったものは拡がっ電波ロープの内部エネルギーや運動エネルギーとなる。ロープの観測量からその全エネルギー、磁場や電子のエネルギーを推定することを試み、輻射として観測されないバリオンの寄与はそれほど大きくはなく、ジェットは電子陽電子対が主体であるとの予備的結果を得た。
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