すばる望遠鏡のナスミス焦点に設置された高分散分光器の試験観測に参加し、分光器の性能確認のためのデータ解析を行った。その中で、短い露出時間で観測された明るいHg-Mn(水銀-マンガン)星HD186122の赤波長域のスペクトルに特異な輝線群が存在し、また、この星ではヘリウムや炭素など軽い元素が著しく不足していることを見出した。また、国立天文台岡山天体物理観測所の188cm望遠鏡の分光器で観測した、惑星をもつことが発見されたG型星 HD38529の高分散スペクトルを詳細に解析し、この星は太陽に比べ鉄その他の金属元素量が有意に高いことを初めて明らかにした。 金属欠乏星の研究も、すばる望遠鏡その他で観測されたデータを基に進行している。その中で、近赤外線波長域にある中性イオウ(SI)の吸収線の解析から、金属欠乏星のイオウ存在量([S/Fe])は、金属量の低下と共に単調に増加することを見出した。この結果は、銀河形成初期の物質進化の理論的研究に大きな制約条件を課すものである。
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