研究概要 |
本年度は,先ず二次元撮像装置HOPSの設計図を作成し,光学レンズと半波長板を購入した後,モックアップを製作した。次いで,京都大学理学部付属飛騨天文台の65cm屈折望遠鏡に装着するための諸調整実験を行った。 さらに木星大気の光散乱モデルを構築するために,位相行列要素のうち,パイオニア探査機の観測に基づいて得られた雲粒子の位相関数を,ミー散乱で近似する試みを行った。その結果,南熱帯縞では有効半径が0.96μmでその有効分散が0.32,青色光に対する複素屈折率が1.591-i0.0075,赤色光に対するそれが1.535-i0.0012を持った球形粒子なら,可視域から近赤外域に至る13波長で観測された周縁減光曲線を表せることが判明した。しかし同時にまたこのようなミー散乱から予想される偏光度が,木星で観測される直線偏光の特徴を説明できないことも明らかになり,非球形粒子の存在が強く示唆される結果となった。 多重散乱計算に基づき惑星の赤道帯あるいはその近傍の理論偏光度曲線を計算しようとすると,小位相角の場合には非常に顕著な振動が現れる。反射行列要素の内挿精度が極端に悪くなるためである。この精度向上のために,幾つかの工夫を加えた。先ず,多重散乱計算における天頂角余弦μに関する積分には,μ=1近傍に分点が多く取れる求積公式を採用した。さらに内挿式として3次スプライン関数を用いたが,その際,着目点での入射光あるいは出射光方向の天頂角余弦が0.7071より大きいときには,独立変数として天頂角の正弦を用いるようにしたところ,振動をほぼ抑えることができ,実用に耐える偏光度曲線が得られた。
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