超対称性ゲージ理論を超弦理論の立場から理解する努力は、当初超対称性が2つある理論に限られていたが、それ以来超対称性が1つある、より現実的な理論についての厳密解の導出に関しての努力がなされてきた。それは、超弦理論のポテンシャルの計算について、重力の寄与の小さい極限操作でゲージ理論の結果を再現するはずであるが、超弦理論における双対性を利用して、その計算をより簡単な形の積分に置き換えようという努力であった。 今年その努力により、超対称ゲージ理論の厳密解についての考察に意外な対応関係が提唱された。それは、ゲージ理論の厳密解は行列についての積分の第一近似から導出することが出来るというものだった。本研究者の本年度の主な成果は、当初物質場のない場合についてなされていたこの対応の計算を、これを物質場のある場合について確かめたというものだ。一つ目の成果は、中間子などのクオークの2体の束縛状態に関しての厳密解である。この厳密解は1994年頃に提唱されていたが、行列模型からの計算結果がそれを再現することを導くことができた。2つめには、クオーク3体以上からなる陽子などについてののポテンシャルに関してはある近似の元ではほぼ再現することができたが、これに関しては正確な一致はみられなかった。 また、超対称性が2つある理論に関しても行列における計算が可能であるが、こちらについては重力による補正についても厳密に計算することができる。現在までのところ重力における第一次補正の計算を遂行することができた。
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