研究概要 |
中性子星コアにおけるハイペロン(Y)混在問題に対し現実的アプローチを行い,中性子星モデルへの影響やY成分の超流動問題を論ずるのが本課題の目的である。今年度(H12年度)の研究実績を中心に記載する。 1.Λがy_Λの割合で混在した{n+Λ}物質でのG行列計算により構成したΛN,ΛΛ有効相互作用を用いて,Y≡Λのみの場合の混在問題と中性子星への効果の検討については,平成11年度にほぼ計算を終えていた。今年度はこの内容を論文にまとめ発表した。また,ここでは有限温度の場合への拡張方法についても論じた。 2.Σ^-についても同様の手法によりΣ^-N,Σ^-Σ^-の有効相互作用を構成し,今年度はY≡Λ,Σ^-の場合についての混在問題を調べた。ΛやΣ^-はほぼ3倍の核密度(ρ〜3ρ_0)から混在し始め混在度はρと共に増大する,典型的な中性子星の中心部ではΛやΣ^-が核子(N)と対等な成分となる,Y混在はEOSを強く軟化させるため理論上の中性子星最大質量M_<max>は観測値の1つM_<obs>=1.44M_<【of sun】>より小さくなるという深刻な問題に逢着する,といった結果を得た。また,ソフト化の機構と相変化の特質を分析し新たな知見を得た。 3.M_<max><M_<obs>は「Yの関与する相互作用系に"Extra Repulsion"が働いているべし」という大変興味深い問題でもあること,3体核力にみられるような斥力は1つの候補であること,を指摘した。 4.3種の現実的なYY相互作用(Nijmegen,Ehime,Funabashi-Gifuによる)を採用して,混在するΛやΣ^-(そして混在する場合は≡^-も)が超流体なっている可能性が高いことを示した。Λ超流体が限られた密度域でのみ存在することから,ハイペロン冷却中性子星に対し質量制限がもたらされることを指摘した. 以上の結果は既に国際会議等で発表されている。現在は総括的論文を準備中である。
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