超弦理論やM理論の低エネルギー極限では、超対称性標準模型が実現されていると期待される。この理論はもう一方で、標準模型におけるヒッグスセクターのいわゆる自然さの問題を解決し、この世界の粒子の質量の起源を説明できるものとして期待される。今年度は、主に、超対称標準模型における現象論的側面について研究を進め、より基礎的な理論である超弦理論からの現象論的示唆は何か、また将来超対称性が実験的に見つかった時に超弦理論にたいして何が言えるかについて、考察を進めた。具体的には、1.弦理論の基本的なエネルギースケールが小さき時に実現可能な超対称粒子からのFCNC過程への寄与を押えるシナリオ(小嶺、山田、山口)、2.これとは別にある種の弦理論で実現されると考えられるno-scaleシナリオに対する現象論的考察(小嶺、山口)、3.Rパリティが破れた時でも最も軽い超対称粒子が宇宙の暗黒物質になり得るシナリオ(高山、山口)、4.ごく最近のミューオンの異常磁気双極子の測定値が標準模型の予言と食い違うことから超対称性の間接的な証拠ではないかと考えられるが、その点に関する一般的な考察(小嶺、諸井、山口)等を行った。
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