超弦理論挿M理論の進展は、時空の構造の豊かな構造を明らかにしつつある。こうした発展に刺激され、本研究では素粒子の統一理論の様々な問題について新たなアプローチを試みた。特に、高次弦理論にもとづく研究として1。高次元理論においてソリトン的な背景場の近傍にカイラルフェルミオンが局在化できるという現象を用いた、大統一模型の諸問題への新たな機構の提案2。大きな余剰次元の模型や、ランドール・サンドラムの余剰次元の模型に関する研究3。TeVスケールの余剰次元に標準模型の粒子が住んでいる場合の現象論。特に、LHCなどのコライダー実験での信号についての新しい提案4。低いエネルギースケールに弦スケールがある場合の異常U(1)理論を用いた有効超対称理論の研究等を行った。また、この他にも超弦理論の低エネルギー有効理論として期待される超対称統一理論についての研究を行った。特に、Brookhaven研究所におけるミューオンの異常磁気能率の測定が、標準模型の予言との有為なずれを与える結果となったため、超対称標準理論の枠で、いかにこのずれを説明できるか、議論し、スレプトンの質量が軽い場合には、超対称理論からの寄与が大きくなり、実験を説明できることを示した。さらに、超大統一理論の古典的な予言の一つであるボトムクォークとタウレプトンの質量比に関して、現在の実験の制限を加味した詳細な研究を行い、大統一スケールで大きな補正効果がないとうまく行かないことを示した。この結果は、大統一理論における模型構築に対する強い制限になると期待される。これらの結果は、論文またはプレプリントとして公表されている。
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