研究概要 |
超新星残骸(SNR)が銀河宇宙線の主たる源であることが、エネルギー的考察、衝撃波による粒子加速機構、宇宙線源の化学組成から示唆されている。本研究では、超新星爆発時の原子核合成理論の最新の結果を基礎にして、化学組成から見た宇宙線のSNR起源説に定量的考察を加えた。その結果、Ia,Ib,II型超新星からの放出物質と、それらが掃いた星間物質の混合物質として、宇宙線源の水素からニッケルにいたる化学組成が、同位元素まで含めてファクター1.6の範囲で説明できることをつきとめた。 また、X線観測衛星ASCAによってシンクロトロンX線が検出されているSNR RXJ1713.7-3946(以後1006Jrと呼ぶ)をCANGAROO3.8m鏡により観測し、そのデータを解析した。このSNRのNWリムから約5.6標準偏差の有意度で2TeV以上のガンマ線放射が検出された。またガンマ線放射領域は拡がっており、その領域は、ASCAによるX線で最も明るい領域とほぼ一致することをつきとめた。このTeVガンマ線は、SN 1006の場合と同様に、星周物質密度が低いことから、宇宙背景放射の逆コンプトン散乱によると推定される。さらに、ASCAによるX線強度と本研究によるTeVガンマ線強度から、このSNR中の平均磁場強度は約10マイクロガウスであると計算された。また、衝撃波加速による電子の最高エネルギーは、求められた磁場強度から、約100TeVになると推定された。これらの結果は、SNR中での衝撃波による100TeV領域までの粒子加速の直接証拠である。
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