研究概要 |
本研究課題の本年度の研究は高エネルギー加速器機構大型シミュレーション研究、平成12年度(大型-57)課題名「Landau gauge固定格子QCDのシミュレーション」研究代表者[中島日出雄]により実施されたシミュレーションによるものである。赤外領域における非摂動力学により、九後-小嶋カラー閉じ込め条件、グルーオンプロパゲーター,ゴーストプロパゲーター、running coupling α,の数値的検証研究を行った。フェルミオンを入れた大きな格子でのfull QCDシミュレーションを行うには至らなかったがいくつかの重要な知見が得られた。1)九後-小嶋カラー閉じ込め条件μ=-δ^b_aは完全には成り立っておらずμ=-0.7δ^b_aの程度である。2)グルーオンプロパゲーターの絶対値はゲージ場の定義をU-線形ととるかlogU形にとるかで約20%の差が生ずる。これは格子定数αについて2次までではくりこみによる効果と解釈できるとする考えと矛盾はしていない。3)ゴーストプロパゲーターの赤外領域での発散の程度はq^<-2(1+α)>と表したとき16^4格子ではα【similar or equal】0.2程度,格子サイズの増加に伴ってαは大きくなる。ゲージ場の定義依存性については、グルーオンプロパゲーターがoverallの因子の違いを示すのに対し、特にInfrared側では上記のpower αに3倍程度の顕著な違いが見られた。4)赤外領域でのグルーオン場の3点関数からQCD running coupling α,を求めることができるが,その大きさはグルーオンプロパゲーターが運動量0で有限か0かに大きく依存する。5)ゴースト場、反ゴースト場とグルーオン場の3点関数からQCD running coupling α,を求めることもでき赤外領域ではグルーオン場の3点関数よりゆらぎの小さい結果が得られる。6)Zwanziger理論におけるhorizon関数の値は負になり、理論の予想と矛盾はない。 これらは16^4格子でβ=6でsmearing gaugeにunique gauge固定した結果である。九後・小嶋理論の閉じ込め条件のパラメータμが理論予想の7割ぐらいに留まっていることや、1+μとInfraredのグルーオン3点関数やゴースト・グルーオン・ゴースト3点関数による、Z_1/Z_3やZ_1/Z_3との関係を論ずるために、さらに大きな格子シミュレーションによる詳細な検討が必要である。これらの問題は基本的にGribov gauge固定縮退問題の観点から検討すべき関係にあり、連続理論のBRS対称性による解析の数値的検証として本研究課題のさらなる追求が望まれる。
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