クォーク自由度を考慮したハイパー核の性質とインスタントンの効果

1999 年度 実績報告書

• 研究課題/領域番号: 11640258
• 研究機関: 日本社会事業大学
• 研究代表者: 竹内 幸子 日本社会事業大学, 社会福祉学部, 助教授 (90251503)
• 研究分担者: 清水 清孝 上智大学, 理工学部, 教授 (00143363)
• キーワード: ハイパー核 / インスタントン / クォーク模型 / スピン軌道力 / 反対称スピン軌動力 / ラムダ粒子

研究概要

本研究は、グルーオンの幾何学的配位(インスタントン)と、互いにフレーヴァー1重項に組んでいる軽いクォークとの結合を考慮した結果、正負パリティのバリオン単体系の励起状態と2核子系の性質を同時に記述できるようにしたクォーク模型を、ストレンジネスを含む2バリオン系に拡張し、特に対称・反対称スピン軌道力と、新たに導入したフレーヴァー1重項に特異的な相互作用の影響について、その性質を調べるものである。
核子-ハイぺ口ン系、2ハイペ口ン系は、ストレンジネスを含み、アイソスピンが同じために一般にスピン3重項と1重項の状態が混合する。この混合を起こすバリオン間相互作用は反対称なスピン軌道力として表せ、ヴェクトル中間子のテンソル結合から現れる項、及び1グルーオン交換のクォークの対称スピン軌道力から現れる項が重要であると報告されている。
本年度の研究では、2核子系の低エネルギー領域における観測量を正確に記述できるクォーククラスター模型を作成し、それを核子-ハイペロン系に拡張して、ラムダ粒子-核子散乱、及びシグマ粒子-核子散乱の観測量について調べた。その結果、低エネルギー領域でのハイぺロン-核子散乱の観測量を、既に観測されている部分について、大まかな性質を再現できること、ラムダ粒子-核子散乱の散乱断面積に反対称なスピン軌道力の影響が現れること、インスタントンの効果により、その影響は弱められること、また、ハイパー核中のラムダ粒子に対するスピン軌道力が対称・反対称なスピン軌道力の打ち消し合いにより小さくなること、シグマ粒子-核子のチャネルを考慮することにより、さらにうち消し合いの度合いが高まることを明らかにできた。
次年度では更に進んで、実際のハイパー核に於けるうムダ粒子に働く力を調べる予定である。

研究成果

• [文献書誌] Kiyotaka Shimizu: "Diquark Correlations in the Nucleon"Nuclear Physics. A657. 283-302 (1999)
• [文献書誌] Y.B.Dong: "Spin Content of the Nucleon in a Relativisatic Quark Model"Journal of Physics. G25. 1115-1122 (1999)
• [文献書誌] Y.B.Dong: "Nucleon From Factors in a Relativistic Quark Model"European Physical Journal. A6. 203-210 (1999)
• [文献書誌] Y.B.Dong: "Description of the Electroproduction Amplitudes of the Roper Resonance in a Relativistic Quark Model"Physical Review. C50. 1-8 (1999)
• [文献書誌] Sachiko Takeuti: "Spin-orbit Interactions between Two Baryons"Progress Theoretical Physics Supplement. 137. (2000)
• [文献書誌] Kiyotaka Shimizu: "Study of Nucleon-Nucleon and Hyperon-Nucleon Interraction"Progress Theoretical Physics Supplement. 137. (2000)
• [文献書誌] M.Oka: "Quark Cluster Model of Baryon-Baryon Interactions"Progress Theoretical Physics Supplement. 137. (2000)
• [文献書誌] T.Sakai: "H-dibaryon"Progress Theoretical Physics Supplement. 137. (2000)
• [文献書誌] T.Inoue: "Weak Hyperon-Nucleon Interaction and the pn->Lambda p Scattering"Progress Theoretical Physics Supplement. 137. (2000)