重力を、他のすべての力、すなわち強い核力・弱い核力・電磁気力と同じように量子化する試みは、理論物理学の重要な目的のひとつであった。アインシュタイン重力をそのまま摂動論的に量子化することは不可能であることが知られてから、他のいろいろな方法が試みられてきた。その中で最も研究者をひきりつけているのは超弦模型であるが、それがわれわれの知る時空と、その中での重力を記述しているかどうかは、いまだ明らかでない。 私たちは、4次元時空を格子状に分割し非摂動論的に量子化することを過去7年にわたり科研費の補助を受けて試みてきた。そして、ついに重力は4次元時空上でも量子化できることを見出した。もちろん数値的での話であり、これを確実にするためには解析的な理論を構築する必要がある。私たちの数値的分析によれば、4次元重力の量子化は、コンフォーマル変換不変な4次元重力を非摂動系とし、重力場を摂動的に取り扱うことで可能であることを示唆している。そのような理論はまだわかっていないが、数値計算と比較対照することで遠からず解明できるものと私たちは考えている。 数値的な量子化が成功したことにより、その宇宙論的意義も研究の俎上にあがってきた。宇宙のトポロジーを決め、数値的に求まった時空がアインシュタイン方程式の解とよく似ていることや、空間がフラクタル性を持つため物理的次元は4から少しずれる可能性があることなどもわかってきた。これが宇宙項の問題や、宇宙論で問題となっているダークマターやダークエネルギーの解決となるかどうかは、さまざまなトポロジーとより大きなサイズでのシミュレーションにより明らかになると期待している。
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