当研究の研究目的の一つは、超対称性をsoftに破る項のuniversalな総和則を通じ、超対称弦理論の低エネルギー有効場の理論を構成する上で重要な鍵を握るtarget space dualityの持つ低エネルギー領域での物理的意味を明らかにすることである.超対称弦理論の強結合極限の低エネルギー有効場の理論は、11次元の内1次元をコンパクト化したE_8×E_8に基づくゲージ相互作用を含む超対称重力理論であることが知られている。この有効理論に於いて、超対称性がモジュライ場の真空期待値によってsoftに破項れていると仮定し、超対称性をsoftに破る項の間にuniversalな総和則が成立しているかを調査した。その結果、総和則はある限られたパラメータの範囲でしか成立していないことが判明した。又、もとの超対称弦理論はtarget space duality対称性をもっているにもかかわらず、その低エネルギー有効理論である11次元の超対称重力理論には、そのような対称性がなくなっていることが原因であることが明らかになった。さらに、超対称弦理論の強結合極限の低エネルギー有効場の理論から予測される超対称性をsoftに破る項が、最小超対称標準模型ののゲージ対称性を動力学的に破るか調査した。その結果、ゲージ対称性を動力学的には、11次元の内部空間の幾何学を決めるパラメータに大きな制限が必要であることが分かった。また、最小超対称標準模型の超対称粒子のスペクトルを予言して、超対称性をsoftに破る項の間にuniversalな総和則が成り立っている場合と比較し、実験的に選別できるかも検討した。
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