今年度は、最小超対称標準模型を最小に5次元に拡張した模型で、超対称性を破る項がどのようなエネルギー依存性をもっているかを計算し、それらの低エネルギーでの構造を調べた。また、高次元の超対称大統一理論を考察し、Higgsボゾンの質量の実験的上限が114GeVと比較的大きいのは、時空の次元が4以上であるということを示唆していると指摘をした。更に、標準理論に粒子の質量の階層性の問題と呼ばれている問題があるが、この問題が解決しない限り標準理論の質量の起源を理解することはできない。分担者の寺尾助教授は、超コンフォーマル理論の強い力を利用して階層性の問題を解く糸口を探る研究を行った。超コンフォーマルな力は、超対称性を破る項が世代ごとに縮退していて、しかも超対称性を破る項の間に新たな総和則が成り立っていることを見い出した。同様に、最小超対称標準模型には、μ問題と呼ばれている問題があり、この問題が解決しない限りなぜ標準模型のエネルギースケールが100GeV位なのか自然に理解できない。Rパリティが破れると、μ問題がニュートリノ質量に密接に関係しているので、なぜニュートリノ質量がそんなに小さいのか自然に理解できなくなる。久保は、超コンフォーマル理論の強い力を利用して小さいニュートリノの質量を得ることができるという提唱を行った。来年度は、このようなアイディアに基づいた理論の枠組みで超対称性の破れとニュートリノの質量の起源に関する研究も進めていく予定である。
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