原始中性子星の熱的進化におけるK中間子凝縮と低質量ブラックホールの可能性

1999 年度 実績報告書

• 研究課題/領域番号: 11640272
• 研究機関: 京都大学
• 研究代表者: 巽 敏隆 京都大学, 大学院・理学研究科, 助手 (40155099)
• 研究分担者: 高塚 龍之 岩手大学, 人文社会科学部, 教授 (50043427)
• キーワード: 中性子星 / K中間子凝縮 / 遅延崩壊 / クォーク物質 / 強磁性 / ハイペロン超流動 / 低質量ブラックホール / ハイペロン物質

研究概要

1)原始中性子星におけるK中間子凝縮と遅延崩壊の可能性について
高温、ニュートリノ捕捉下でのK中間子凝縮相の状態方程式を完成させた。この研究は原始中性子星の性質の解明、状態方程式の軟化による低質量ブラックホールへの遅延崩壊を解明するうえでの基礎となりうる。この状態方程式を用い、TOV方程式を解くことにより、原始中性子星の平衡形状をエントロピー、レプトン数の関数として系統的に調べた。さらにこの結果を用いて相転移による遅延崩壊の可能性を議論し、原始中性子星の進化過程におけるニュートリノ解放、冷却等によってK中間子凝縮相転移が発生すれば、初期状態によっては遅延崩壊が起こることがわかった。これらの研究はいくつかの国際会議でも報告された。現在K中間子凝縮相でのニュウトリノ放出率、ニュウトリノ拡散過程における不透明度についても考察を進めている。
2)ハイペロン物質の性質とハイペロン超流動
核物質でのハイペロンの混在、その有効質量をハイパー核の性質をよく再現する現実的な核子-ハイペロン相互作用を用いて研究し、ハイペロン-ハイペロン対相互作用によって超流動になる可能性を研究した。その結果定性的な様子は変わらないものの、定量的には核子-ハイペロン、ハイペロン-ハイペロン相互作用に大きくよることが示された。
3)クォーク物質での強磁性の可能性と強磁場中性子星について
最近マグネターと呼ばれる通常の中性子星より非常に大きな磁場をもった"中性子星"の存在が話題になっている。そこで磁場の起源についてクォークハドロン系のダイナミクスを検討し、クォーク物質では低密度で自発的磁化の可能性を指摘した。

研究成果

• [文献書誌] T.Tatsumi: "Thermal and quantum flnctuations in the kaon-condensed phase"Nucl.Phys.. A653. 133-165 (1999)
• [文献書誌] T.Maruyama: "K^+(K^0)-Condensation in Highly Dense Matter with the Relativistic Mean-Field Theory"Prog.Theor.Phys. 102. 809-818 (1999)
• [文献書誌] T.Muto: "Nonequilibrium Weak Processes in Kaon Condensation-Reaction rate for the thermal kaon process"Phys.Rev.. D(in press). (2000)
• [文献書誌] T.Muto: "Nonequilibrium Weak Processes in Kaon Condensation II-kinetics of condensation"Phys.Rev.. D(in press). (2000)
• [文献書誌] T.Takatsuka: "Baryonic^3P_2Superfluidity under Charged-Pion Condensation with Δ isobar"Prog.Theor.Phys.. 101・5. 1043-1081 (1999)
• [文献書誌] T.Takatsuka: "Superfluidity of A-Hyperons Admixed in Neutron Star Cores"Prog.Theor.Phys.. 102・5. 1043-1048 (1999)
• [文献書誌] T.Takatsuka: "A-Hyperon Superflnidity in Neutron Star Cores"Nucl.Phys.. A(in press). (2000)
• [文献書誌] M.Yasuhira: "Delayed Collapse of Protoneutron Stars with Kaon Condensation"Nucl.Phys.. A(in press). (2000)
• [文献書誌] M.Yasuhira: "EOS for Kaon Condensed Matter and Delayed Collapse of Protoneutron Stars"Nucl.Phys.. A(in press). (2000)
• [文献書誌] M.Yasuhira: "Protoneutron Stars with Kaon Condensate and Possibility of Delayde Collapse"Proc.of OMEG 2000. (in press). (2000)
• [文献書誌] T.Tatsumi: "Magnetic instability of quark matter"Proc.of SNHR 99. (in press). (2000)
• [文献書誌] T.Tatsumi: "Ferromagnetism of quark Iiquid and magnetars"Proc.of OMEG 2000. (in press). (2000)