研究概要 |
本年度は,小玉がブレインワールドモデルを,また,中尾が球対称な裸の特異点の物理的影響を中心として研究を行った.具体的な内容と成果は次の通りである. (1)ブレインを境界とする一般の高次元宇宙モデルにおいて,低次元の対称性をもつ背景解からの摂動に対するゲージ不変な定式化を完成させ,ブレインの摂動の振る舞いを決定するには,高次元における波動方程式に対する境界値問題を解くことが必要であることを明らかにした.この成果は,Phys.Rev.D誌に掲載された. (2)M理論から導かれたブレインワールドモデルであるHorava-Wittenモデルに対して,その宇宙論的な解のテンソル摂動の振る舞いとその反作用を(1)で得られた定式化と2次摂動論を用いて調べ,それらの解が反作用に対して不安定であることを示した.この成果は,Phys.Rev.D誌に掲載予定である. (3)球対称ダスト重力崩壊で生み出される裸の特異点の物理的効果を見るために,幾何光学近似を用いて量子スカラ場に対するエネルギー運動量テンソルの真空期待値の振る舞いを調べ,裸の特異点から無限遠に放出される量子エネルギー束は,特異点発生時間を時間の原点とするとき時間のべきに逆比例して限りなく増大することを示した.この結果は,Phys.Rev.D誌の2編の論文として発表した. (4)球対称ダスト重力崩壊で生み出される裸の特異点から放出される重力波のエネルギーをニュートン近似における4重極公式を用いて計算し,相対論的な摂動論による計算と一致することを示した.この成果については,現在論文を投稿中である.
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