研究概要 |
本年度は,小玉がブレインワールドモデルにおけるブラックホールおよび4次元冨松佐藤解の構造の研究を,中尾が高次元時空における裸の特異点発生条件および自己相似的特異点の構造の研究を行った.具体的な内容と主な成果は次の通りである. 1.高次元時空における特異点とブラックホール:高次元宇宙モデルにおける宇宙検閲仮説研究の出発点として,高次元時空内の真空ブレインの剛性を調べた.まず,静的球対称高次元時空内のブレインの可能な配位をすべて決定し,その結果に基づいてそのような高次元時空内では正則なブラックホールを含むブレインが存在しないことを示した.さらに,Einstein方程式を満たす静的な高次元時空内で真空ブレインの連続変形が可能とすると,高次元時空は必ずブラックストリング解で記述されることを自然な物理的条件下で証明した.これらの結果は,Prog..Theor.Phys.誌に掲載された.また,高次元重力理論に対する初期値問題において,ホライズンの発生条件を調べ,4次元のフープ予想が高次元では成り立たず,その代わりホライズンの発生条件が天体を囲む面の面積に対する制限として表されることを見いだした.この結果は,Phys.Rev.D誌に掲載された. 2.冨松佐藤解の時空構造:非球対称重力崩壊により発生する時空特異点の構造を探るために,裸の特異点を含む最も代表的な定常軸対称真空解である冨松佐藤解の構造を詳しく調べた.その結果,変形パラメーターδ=2の解は,それまで信じられていたのと異なり,2つのブラックホールを含むことを発見した.また,冨松佐藤解の非回転極限であるδ=2Weyl解の裸の特異点が実はリング状であり,それを縁とする2枚の縮退型ホライズンが存在することも見いだした.これらの成果については,現在論文を作成中である.
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