研究概要 |
本研究課題で平成11年度より平成14年度までの間に行われた研究成果の概要は次の通りである. 1.Tolman-Bondi解の摂動(中尾):圧力ゼロ物質の球対称重力崩壊により生じる裸の特異点の安定性,物理効果を見るために,その摂動の振る舞いを調べ,重力波摂動に伴うエネルギー輻射束がCauchyホライズンで発散するが,古典論の適用範囲内では総放出エネルギーはPlanckエネルギー程度にとどまることを示した. 2.冨松佐藤解の時空構造(小玉):非球対称重力崩壊により発生する時空特異点の構造を探るために,裸の特異点を含む最も代表的な定常軸対称真空解であるWeyl解および冨松佐藤解の構造を詳しく調べ,それらがこれまで知られていなかった豊かな構造を持つことを示した. 3.コンパクトBinachiモデルの分類(小玉):空間的にコンパクトでかつ局所的に一様な宇宙モデルの位相構造を含めた完全な分類(ただし双曲型を除く)を,真空系および理想流体型について完成させた.その結果として,空間のThurston型がH^2xRおよびSL_2Rのモデルが最大の力学自由度をもつことを示した. 4.ブレインワールドモデルの摂動(小玉):ブレインワールドモデルを含む,部分的な空間的対称性を持つ背景時空の摂動に対するゲージ不変な定式化を世界で初めて完成させ,ブレインワールドモデルにおける構造形成研究の基礎を与えた.また,それに基づいてHorava-Wittenモデルの宇宙論的解の不安定性を指摘した. 5.高次元時空における特異点とブラックホール(小玉,中尾):静的球対称高次元時空内のブレインの可能な配位をすべて決定し,その結果に基づいてそのような高次元時空内では正則なブラックホールを含むブレインが存在しないことを示した.さらに,Einstein方程式を満たす静的な高次元時空内で真空ブレインの剛性を示した.また,高次元重力理論における初期値を数値的に構成することにより,フープ予想が高次元で成立しないことを示した.
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