本年度は、AdS/CFT対応に関連して派生した線形ディラトン(LD)模型について解析した。LD模型はLittle string理論、あるいはそれを一般化した特異点を持つ多様体上の弦理論と、AdS/CFT対応と同様の意味で、双対であると考えられており、弦理論として厳密に解析できる点が特徴である。また、これと双対な理論は通常の弦理論とは異なり重力を含まず、また第一量子化の枠内で質量殻外の相関関数が定義できる等、それ自体で非常に興味深い性質を持っている。 このLD模型の解析に関しては、これまでNSR形式とSL(2)/U(1)商空間の方法を組み合わせて、いくつかの相関関数が計算されているが、理論のスペクトル、特に超対称性の表現等に不明な点が多く残されていた。これについて 1.NSR形式は用いるが、商空間の替わりに直接Liouville理論を解析し、Littele string理論のスペクトルを議論した。 2.理論の超対称スペクトルを明らかにするために、Berkovits達によって構成された超対称性が明白な新しい方法を用いて再定式化し、スペクトル、ゴースト状態の有無等を解析した。 2.については現在更に、時空の超共形対称性の生成子を具体的に構成中である。 またBerkovitsの定式化に関連して、10次元の超ポアンカレ共変性が明白な定式化についても解析を進めている。
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