AdS/CFT対応を用いることにより、超重力近似を越えてより一般的に高次元の超共形ゲージ理論を調べるには、反ドジッター空間上の超弦理論を構成することが必要不可欠である。当研究ではこのような観点から反ドジッター空間、あるいは類似の双対性により超共形ゲージ理論と関連した、より一般の背景時空上における超弦理論を具体的に構成し、これらを詳細に解析した。 平成11年度には、まず高次元の反ドジッター空間を考えるための準備として、より簡単な3次元反ドジッター空間の場合を考えた。NSR形式を用いた超弦理論の厳密な構成を与え、無限次元の超共形代数の生成子を具体的に構成し、これが正しい代数を満たすことを示した。 平成12年度においては、Dブレインの代わりにNSブレインを考えることによりAdS/CFT対応と同様の対応が存在する、線形ディラトン背景時空上の超弦理論(LD模型)についてNSR形式を用いた解析を行った。その結果残念ながら超共形対称性は持たないことが明らかになった。 平成13年度には、Berkovitsによって定式化されたハイブリッド形式を最も簡単な3次元のLD模型に適用し、そのスペクトル、ユニタリティーや時空の対称性などを解析した。またBRS荷電を変形することにより時空の超共形対称性を持つ新しい模型を構成した。 平成14年度には、上記模型のより詳しい解析に加えてNS-NS平面波時空上の超弦理論を解析した。ハイブリッド形式を用いた解析により低いレベルのスペクトルを具体的に求め、短弦セクターの零質量スペクトルに、いくつかの超対称性シングレットが存在することを発見した。
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