研究概要 |
本年度は、まず前年度からの研究[1]を継続して、カイラルU(1)ゲージ対称性が力学的に生成されるような、フェルミオン物質場の理論を研究した[2]。このモデルは、2つの複素スカラー場とアーベリアンのゲージ場からなる繰り込み可能な理論と同値であるが、スカラー場が1つでなく2つ生じる点で、興味深いものとなっている。 本年度の中盤には、QED(量子電気力学)のゲージ依存性について研究した。ゲージ理論は、そのゲージ対称性をあからさまにしたままでは、量子化ができないことはよく知られている。しかしゲージ対称性のおかげで、グリーン関数は、物理量には影響を与えない特別な形のゲージ依存性をもつ。したがって、どのような形のゲージ依存性をグリーン関数がもつかは、ゲージ対称性そのものを理解することになる。本研究では、Procca型の質量項(ゼロでもかまわない)があるようなQEDのゲージ依存性を、厳密に求めることに成功した[3]。現在は、このゲージ依存性の研究の拡張として、ゲージ不変量のみを自由度として持つユニタリ・ゲージの繰込みの性質の見直しを行っている。 研究実施計画では、本年度は有限温度でのアーベリアン・ゲージ理論の相構造を研究することになっていた。有限温度での性質ではないが、アーベリアン・ゲージ理論の基本的な性質を研究したということで、本年度の成果は、広い意味で、実施計画に沿った内容となったといえる。 参考文献: [1]H.Sonoda,"QED out of matter,"hep-th/0002203 [2]H.Sonoda,"Chiral QED out of matter,"hep-th/0005188 [3]H.Sonoda,"On the gauge parameter dependence of QED,"hep-th/0008158
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