研究概要 |
ハイペロンー核子(YN)スピン軌道力は、中間子理論に基づくものとクオーク理論に基づくものとでは、特にantisymmetric Spin-orbit(ALS)forceにおいて際だった違いがあることが知られている。しかし、YN偏極散乱データがないため、YNスピン軌道力に対する実験的知見は皆無に等しい。このスピン軌道力に対し、ハイパー核の構造研究から有用な情報を与えることを目的として、^9_ΛBe,^<13>_ΛCにおける精密ガンマ線分光実験(E930,E929)が昨年アメリカのブルック・へブン研究所で行われた。我々は、^9_ΛBe,^<13>_ΛCのレベル構造を、2α+Λと3α+Λの3体・4体モデルに基づいて研究することにより、来るべき実験結果は、YNスピン軌道力にどういう情報をもたらすのかを、以下のように初めて明らかにした。即ち、我々は、2種類のYN相互作用、中間子理論に基づくYN相互作用とクオーク理論に基づくYN相互作用とを用いて、^9_ΛBe,^<13>_ΛCのスピン軌道力によるdoublet状態の分岐エネルギーを求め、2つの相互作用によってその値が非常に異なること(後者は前者の半分以下)、この違いはsymmetric spin-orbit(LS)力とantisymetricspin-orbit(ALS)力のキャンセルの仕方によることを明らかにした。即ち、分岐エネルギーに対するLS力の寄与は、2つの理論の間ではほぼ同じであるのに対して、逆符号のALSは2つの理論で大きな差があることを解明した。このことから、我々は、来るべき実験結果が、ALSの導き方・大きさに貴重な情報を与えることを強く示唆した。
|