研究概要 |
本年度に行われた研究の中心的課題は、核物質中に混在するハイペロン(Y=Λ,Σ,Ξ)の一体ポテンシャルU_Yと有効質量M^Y_*の分析である。これらはハイペロン-核子(YN)間、及びハイペロンーハイペロン(YY)間の相互作用の性質に密接に関係している。この分析は中性子星の内殻におけるハイペロン混在やハイペロン超流動の可能性を考察する上での基礎を与えるものである。我々はNijmegen groupによって提案されたSU(3)-invariant OBEYN・YY interactionsを用いたG-matrix calculationsを実行することによって、陽子・中性子同数核物質及び中性子物質中のU_YとM^Y_*をもとめた。まず、Λ粒子が1個含まれる場合に得られたU_ΛとM^Λ_*が、BNLやKEKで観測された重いΛハイパー核の励起スペクトルのデータを用いて定量的に調べられた。その結果、いくつかのNijmegen OBE modelsの中でΛN奇状態で引力をあたえるバージョンが妥当であることが分かった。そのような相互作用は高密度核物質中で相対的に深いU_Λと大きいM^Λ_*を与える。前者は中性子星物質中でのΛ混在に有利であり、また、後者は混在するΛが超流動状態になっている可能性を増大させる、という興味深い結果につながる。そのような結果は、更に、中性子・Λ混在核物質の場合の計算によって確認された。 同様の計算が中性子物質中にΣ^-もしくはΞ^-が混在する場合に遂行された。ここで負電荷粒子が選ばれたのは、これらが中性子星物質中で重要な働きをするためである。データの貧困さによる相互作用の不定性は大きいが重要な示唆もある。例えば、(K^-,π^+)反応によるΣ^-生成のデータから示唆される斥力的nΣ^-相互作用は、中性子物質中でのΣ^-混在を抑制する役割をはたす。
|