研究概要 |
本研究計画の進展にとっての重要な要因は、この期間にハイパー核に関するいくつかの興味ある実験結果が発表された事である。BNL-E930実験においては^9_ΛBの5/2^+_1 and 3/2^+_1 spin-doublet statesからのγ線を、またBNL-E929実験においては^<13>_ΛCの3/2^-_1 and 1/2^-_1 spin-doublet statesからのγ線を測定することによって、Λのsplitting energyが非常に良い精度で決定された。これらの実験に先行した我々の計算で、^9_ΛBeと^<13>_ΛCにおけるΛ粒子のspin-orbit splittingが種々のΛN間LS interactionsから導かれた。実験データは非常に小さいΛ spin-orbit splittingを示しており、quark modelによって示唆されるLS interactionとAntisymmetric LS interactionの強いcancellationの可能性が明らかになった。 S=-2状態の相互作用に関しても重要な実験結果が報告された。KEK-E373実験においてエマルジョン中に^6_<ΛΛ>Heと同定されるイベントが発見された。過去における数例のダブルΛ核イベントと異なり、このイベントの解釈はユニークに決まり、抜き出されたΛΛ結合エネルギーの値はΛΛ相互作用に関する研究の基礎となる。我々はこのような新しい状況を踏まえ、軽いダブルΛ核を3-4体クラスター模型を用いて系統的に調べた。また、我々はBNL-E906実験で得られた(K^-,K^+)反応点からのΞ^-粒子放出確率より、ΞN散乱断面積とΞN相互作用に関する情報が得られることを示した。 中性子星物質におけるハイペロン混在の重要性は古くから指摘されてきたが、以前の理論計算はYN・YY相互作用に関する十分な知見に立脚したものではなかった。今回の研究においては、YN・YY相互作用に関する最新の研究成果を踏まえて、中性子物質におけるハイペロンの混在が状態方程式にもたらす影響について調べた。その結果、中性子星の殻領域におけるハイペロン混合が中性子星物質の状態方程式のソフト化と中性子星の最大質量の大幅な低下をもたらすこと、そして観測結果と矛盾しないために高密度で働くバリオン間の3体斥力が必要であること、等の結論が得られた。
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