研究概要 |
従来ハドロン間に働く弱い相互作用は、核子散乱や軽い原子核のγ線遷移におけるパリティの破れを測定する事により研究されてきた。しかしその大きさは核力の10^<-7>程度であった。一方我々の一連の低速中性子のp波共鳴反応実験においてはパリティの破れの効果は10%にも及び、弱い相互作用が10^6倍も増幅されていることが示された。そこで本研究ではハドロン間の相互作用における弱い相互作用の効果をこれまでよりもさらによい精度で定量的に求めるために^<121>Sb,^<123>Sb,^<129>Iをはじめとする中重核および重い核に縦方向に偏極した低速中性子ビームをあてることによって数多くのp波共鳴における中性子ヘリシティ非対称を調べた。 本年度はその実験の完成を目指して合計15個のヘリシティ非対称を持ったp波共鳴の解析を行った。この非対称性により反応の弱い相互作用のマトリックス・エレメントの分散を求め、その分散を準位間隔で割ることによって弱いspreading width Γwを求めた。^<121>Sb,^<123>Sb,^<129>IのそれぞれのΓwの値として(4.9+8.6-2.9)×10^<-7>eV, (1.9+15.0-21.4)×10^<-7>eV, (0.6+0.9-0.4)×10^<-7>eV,を得た。これらのデータは他の原子核で得られた値とエラー範囲内で一致しており、これまで得られているすべての実験データの平均はΓw=(1.5±0.3)×10^<-7>eVとなった。この結果はs-p mixing modelで期待される値と一致する。
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