研究概要 |
本年度は最終年度にあたるため、主として研究結果の解析とそのまとめに重点を置いて研究を進めた。 まず低速中性子による核の共鳴状態におけるパリティ非保存効果の増幅効果の起源をこれまでと異なる観点から調べるために中性子スピンの物質内での回転を調べた。中性子がランタン核を通過する際に0734eVのp波共鳴内で進行方向と垂直な面内でスピンが回転する現象を解析した。その結果スピン回転角は(7.4±1.1)×10^<-3>rad/cmとなり、s-P混合模型の弱マトリクスエレメントとしてxW=(1.71±0.25)meVが得られた。これは縦方向のスピン非対称から得られた結果と誤差の範囲で一致した。 また縦方向に偏極した中性子がパラジウムを通過する際の^<104>Pd,^<105>Pd,^<106>Pdのp波共鳴におけるヘリシティ非対称性を求めた結果、それに対応する弱いspreading widthsがこれまでに得られた他の原子核のデータと矛盾しないことを確認した。 これらの実験結果を総合して中性子散乱におけるs-p mixing modelの正しさが実証されることとなった。 一方、冷中性子源に関しては"cylindrical annulus moderator cell"の特性を詳しく調べ、これを中国、韓国の原子力研究所で進められている冷中性子源の建設計画に生かすべく、検討を進めた。また固体重水素をmoderatorとして超冷中性子を発生させ、それを用いて固体重水素内での超冷中性子の寿命の測定を行った。 中性子スピン干渉実験で二種の物質の粉末のメカニカルな混合状態に中性子を当てた場合の"decoherence現象"を発見し、将来のこの分野の研究に道を開いた。
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