研究概要 |
ハドロン間に働く弱い相互作用の大きさは核力の10^<-7>程度であるとされてきた。ところが我々の一連の低速中性子のP波共鳴反応実験においてはパリティの破れの効果が10^6倍も増幅されていることが示された。そこで本研究ではこの効果を定量的に求めるためにNb, Rh, Pd, Ag, Sb, Cs, I, Th核などの数多くのP波共鳴における中性子ヘリシティ非対称度を調べて弱いマトリックス・エレメントの分散を求め、弱いspreading widthsの平均が(1.5±0.3)×10^<-7>eVである事を示した。 一方中性子が^<139>La核を透過する際に0.734eVのP波共鳴内でスピン回転する現象の観測を行い、スピン回転角が(7.4±1.1)×10^<-3>rad/cmとなることを見出した。 これら全ての実験結果はs-p mixing modelによって説明できることが明らかになった。 一方冷中性子発生についての研究ではcylindrical annulus moderator cellの特性を詳しく調べ、それを冷中性子源の建設計画に生かすべく、検討が進められた。また固体重水素をmo deratorとして超冷中性子を発生させ、それを用いて固体重水素中での超冷中性子の寿命の測定を行った。 更に、冷中性子スピン位相干渉計を用いて量子力学的観測理論を解明するためにスピン干渉実験装置にメカニカル・アロイングによって製作された混合状態のサンプルを挿入し、スピン干渉項を測定する実験をおこなった。この実験によって量子力学的波動関数のコヒーレント状→不完全コヒーレント状態→デコヒーレント状態という状態変化をもたらす物理量を発見した。 これらの研究はいずれも中性子の波動特性に関連した基礎物理学の研究に新しい分野を切り開くために役立てられるものと期待されている。
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