我々は、日米協力実験(E787/949)でK中間子の非常に稀な崩壊モード;K^+→π^+ν^^-;の探索実験を行っている、この探索実験では、崩壊率が21%であるK^+→π^+π^0崩壊が、最大のバックグラウンド源の一つとなっている。この実験では、π^+の運動量を正確に測定する事と、π^0の崩壊から生成される2個のガンマ線を効率良く検出する事が、K^+→π^+π^0崩壊からのバックグラウンドを取り除くためのもっとも重要な事である。π^0の崩壊から生成される2個のガンマ線を検出しそこなう場合には、次の二つの場合が考えられる。 1) ガンマ線が、ガンマ線検出器と相互作用することなく通過した場合。 2) ガンマ線が、光核反応を起こした後、反応生成物が検出されない場合。 本研究では、入射K^+の方向に放出されるガンマ線の検出効率をいかにして上げるかについての検討を行った。今年度は、昨年度作成したK^+中間子静止崩壊測定器のシミュレーションをさらに精密化し、特にガンマ線検出器の境界領域での検出効率を評価しπ^0中間子の検出効率への影響を調べ、ビーム方向の測定器の改良案を作成した。 ビーム中で動作するガンマ線検出器については、(1)純CsI結晶を高磁場用光電子増倍管で直接読み出す方式と(2)鉛とプラスチックシンチレーターを積層し、シンチレーション光をシンチレーションファイバーで磁場のない場所まで引き出し、光電子増倍管で読み出す方式を、シミュレーションおよび測定器試作等によって多面的に評価を行った。特に、この検出器の場合、入射K^+中間子が存在する状態でガンマ線の有無を検出しなければならないので、両方式を使って、測定器をビームに垂直な方向および平行な方向で分割することにより、ガンマ線検出効率が向上する事を確認した。
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