研究課題
Bメソン実験用入射器としての大電流電子線形加速器(ライナック)におけるビーム力学を総合的かつ精密に検証するために、本年度は、1.アライメントシステム改善 2.ビームを用いたアライメント測定 3.ウェーク場効果の測定 4.バンチ構造の測定と解析 5.180度アーク部における同時性の測定と調整 6.ダウンヒル・シンプレックス法によるビーム最適化 7.上記各測定に基づくオプティックスとビーム調整 を行うべく計画を進めてきた。1.では、光検出器回路を改造し、計算機データ取得システムの構築を進めた。来年度はビームとの相関をリアルタイムでとる予定である。2.では、全ての位置モニタを用いて電磁石の磁場中心を求めた結果、ほぼ0.1mm以下の精度でビーム位置と磁場中心を合わせることができた。3.では、初期変位を加えた時のビーム軌道の測定から、従来の双極ウェーク場効果に加えて、はじめて四重極ウェーク場効果の直接測定に成功した。また、この結果からウェーク場を見積もり、4.におけるバンチ長測定結果に基づく計算と比較した結果概略一致した。5.では、アーク部での同時性の測定をバンチ計測システムを用いて行い、ビームオプティックスに補正を加えた結果、同時性が検証された。6.では、ダウンヒル・シンプレックス法を応用し、陽電子発生標的後の陽電子量を目標値として、大電流一次電子ビームのパラメータを適当に選んで目標値の最適化を試みた結果、若干改善が見られた。今後さらに検討を進めたい。7.では、以上の結果をもとにビーム調整を行なった結果、電荷量10nCの電子ビームを180度アーク部を含めてほとんどビームロスなく安定に3.4GeV(陽電子発生標的位置)まで加速できた。ダンピングリングなしでこのような大電流を、ビーム品質を保って高エネルギーまで導いた例は他ではみられない優れた結果である。
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