研究課題
Bメソン実験用入射器としての大電流電子線形加速器(ライナック)におけるビーム力学を総合的かつ精密に検証するために、昨年度までに、1.アライメントシステム改善2.ビームを用いたアライメント測定3.ウェーク場効果の測定4.バンチ構造の測定と解析5.180度アーク部における同時性の測定と調整6.ダウンヒル・シンプレックス法によるビーム最適化を進めてきたが、ほぼ所期の目的を達成したので、本年度は、最終年度として、上記各測定に基づいてモデルオプティックスと実際のビームの比較や、四重極ウェーク場効果の測定などを中心に研究を進めた。具体的には、(A)ライナックのオプティクス計算と現状のビームのリアルタイムオプティクス表示を行なうプルグラムの開発、(B)それを用いた、ビーム異常時の迅速なオプティクス診断と必要に応じた変更、(C)四重極ウェーク場効果の精密測定、を行なった。(A)は、従来は、オフラインで計算した結果を、実際のビームに対して設定し、ビーム診断を行なうというプロセスが一体的でなく、突然のビーム変動などに対応した迅速なビーム診断と調整が困難であったので、導入したものである。これによって、とくに大電流ビームの特性に対する理解がより深くなり、(B)におけるビーム異常時対策などの現実的な成果をあげるだけでなく、(C)におけるように、より高度な四重極ウェーク場測定を精密化することができた。大電流ビームにおいては、四重極場ウェーク場効果が軌道のXYカップリングを通して効くことを、前年度までの研究によって確認していたが、今年度は、その非線型特性を実際のデータとして得ることができた。これは、本研究ではじめて得られたものである。このように、本年度の研究によって、大電流ライナックにおけるビーム力学が総合的かつ精密に検証できる段階に入ったといえよう。
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