平成11年度の成果は、本研究課題に関する次の3項目のテーマに分けられる。 1.QCDの低エネルギー実効理論におけるモノポール配位 Faddeev-Niemiらが最近提案している、QCDの低エネルギー実効理論としての非線形シグマ模型を研究し、そこで現れるモノポール配位を詳しく調べた。特に、QCDの非摂動的配位を特徴付けるインスタントン数が零でないときに、低エネルギーの非線形シグマ模型にどのようなモノポール配位が現れるかを明らかにした。またその際、附随して現れるU(1)ゲージ場のモノポールループ内に作る磁束が、丁度零になっていることを発見した。 2.量子コースティックスの多次元への拡張 本テーマにおける量子コースティックス問題は、量子論におけるコースティックス特異性がどのようにその大域的性質に関与しているかを解明することが目標である。本年度は、その場の理論への拡張のため、まず多自由度系での量子コースティックス問題を調べ、まず量子コースティックスの形態を、それが起きる次元数(【greater than or equal】自由度)によって完全に分類した。また典型的な例として、調和振動子型の時間変調を加えた場合の電子線のコースティックス現象を分析し、その電子線の収束における特徴的な量子効果を明らかにした。 3.特異点のある一次元量子系 大域的構造を持つ量子論は、例えば物理系に何らかの空間的欠陥がある場合に生じる。その最も簡単な場合が低次元系に於ける点欠陥で、その量子論を詳しく吟味することは、単に体系の理解にとどまらず、最近発展の著しい超微細量子工学における応用の観点からも興味深い。本年度では、まず1次元系の点欠陥がU(2)群のパラメーターで分類され、またそのうちパリティ不変な場合には量子力学系としては極めて興味深い現象、すなわちエネルギースペクトルの双対性、Berry位相、超対称性などが見られることを示した。
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