平成12年度は以下の2種類のテーマについて研究を行い、次のような成果を得た。 1)QCDの低エネルギー実効理論におけるトポロジカルな配位について Faddeev-Niemiらによれば、低エネルギーにおいてQCDはある種のトポロジカルな項をもつ非線形シグマ模型で記述される。本研究ではこのシナリオに基づき、元のゲージ場がインスタントン配位のときに、非線形シグマ模型においてどのような対応する配位が出現するかを調べ、またその物理的意義を吟味した。その結果、低エネルギー実効理論では元のインスタントン数に対応する電荷をもったモノポール配位が必ず出現し、4次元時空ではこれがループ構造を成していることを明らかにした。また、そのループにはU(1)ゲージ場が附随し、そのループ内の磁束が量子化されることを証明した。またさらに、Hopf数をもつソリトン配位の現れる可能性(これはグルーボールの候補と考えられる)も考察し、そのHopf数をエネルギーの関係について議論した。 2)点状相互作用のある一次元系の量子論 一次元系の量子力学では、点状の特異点(点状相互作用)はU(2)群のパラメーターで特徴付けられることが知られている。本研究ではこれら一般の点状相互作用のもとでの、エネルギースペクトルおよび散乱振幅を求め、これらが実質的に、U(2)の部分群であるU(1)XU(1)の二つのパラメーターで決まっていることを発見した。さらに、その背景にある、スペクトルを保存するsu(2)変換の存在を指摘し、スペクトルから見たパラメーター空間U(2)の内部構造を完全に決定した。これによって特異点スペクトルの双対性やBerry位相などのトポロジカルな性質が、一般にどのような機構で生じるかが明らかになった。
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