陽子やイオンのシンクロトロンにおいてイオン源から加速器に入射されるDCのイオンビームを、シンクロトロンが持つ加速時間構造に合わせて適切にチョッピングをすることは、ロスを減少させるための重要な技術であり、大強度ビーム加速の際にはそれが必要不可欠となる。そのために用いられるビームチョッパーは、ビーム方向に占める設置距離が短く、かつ高効率なチョッピングが行なえることが望まれる。そのための手段として本研究課題である、高透磁率の磁性体材料である軟磁性合金(Magnetic Alloy、MA)を用いた、ビームチョッパーの開発と実験を開始した。このビームチョッパーは、ビーム軸方向に数kV程度の正負の電圧を発生し、これによりビームエネルギーの変換を行なうことができる。イオン源とRFQ加速器の間にこれを置くことにより、イオンビームの運動エネルギーは周期的に数kV(≒10%程度)の変換を受ける。RFQが持つ狭いエネルギーアクセプタンスのために、このエネルギー変換を受けた部分は、RFQ内で加速されずに失われる。これにより、エネルギー変換の時間構造を適切に選ぶことで、求められるチョッピングが実現できる。 まず始めにMA磁性体をコアとするビームチョッパーを製作した。このビームチョッパーはビーム軸方向に114mmの長さを持ち、内部に25mm厚のMAコア3枚を収蔵している。チョッパー製作と並行して、必要なチョッピング電圧を得るための電源系を強力なFETスイッチを用いて製作した。このスイッチにより、1MHzの周期で約5kVのチョッピング電圧を得ることができた。これらを用いて、RFQの透過効率が測定された。チョッパー電圧を発生させて、ビームがチョップされるかどうかの実験を行なった。繰り返し1MHz、デューティ50%のチョッパー電圧を用いRFQの出口でビームがチョップされていることが確認出来た。
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