セレン(Se)、テルル(Te)、イオウ(S)のカルコゲンは、常温・常圧においては2配位共有結合で結ばれた半導体であるが、鎖状構造や環状構造等、多様な原子配列のトポロジーを示す。また、液体状態からの冷却によって容易にガラス状態を得ることができる。さらに、圧力や温度を変えることによってその物性が大きく変わることが知られている。すなわち、固体状態で圧力を加えることによって、液体状態で高温・高圧にする事によって半導体-金属転移を引き起こし、金属化する。 本研究の目的は、カルコゲンの金属化した固体状態、原子数個から構成されるクラスター状態、カルコゲンにヒ素を添加したヒ素カルコゲナイドの液体及びガラス状態について、構造と電子状態についての知見を得るものである。本研究の内容は、次の3つに大別できる。 (a)高圧下におけるカルコゲンの光学測定に関する研究 (b)カルコゲン・クラスターに関する研究 (c)ヒ素カルコゲナイドに関する研究 (a)では、ダイヤモンドアンビルセルを用いて16GPaまでの超高圧を発生させながら固体セレンの圧力下における光反射率スペクトルを測定し、半導体-金属転移に伴う電子状態について議論を行った。 (b)では、超音速ジェット法により自由空間中にセレン・クラスターを作製し、セレンK吸収端の近傍でのX線吸収分光(XANES)及び光電子-光イオン同時計測(PEPICO)測定を行い、セレン・クラスターのサイズ依存性及びそれらの安定性について議論を行った。 (c)では、ヒ素カルコゲナイド(As-Se及びAs-Te混合系)の液体状態から過冷却液体状態を経てガラス状態に至る広い温度領域において、X線吸収微細構造(XAFS)、電気抵抗等を測定し、局所構造と電子状態について議論を行った。
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