本年度は、昨年度に構築した2次元データの計測システムを使用して、幾つかの表面構造を振動相関熱散漫散乱法で調べた。この2次元データの計測システムは、暗い光を効率良く捉える冷却CCDカメラとダイナミックレンジの高い画像取り込みボードとそれを組み込むコンピューターシステムから構成されている。このシステムを利用することで、これまでと同じ精度のデータを8倍の速度で取り込むことができる。この新しいシステムをSi(001)2x1清浄表面の振動相関熱散漫散乱測定に使用することで、これまで以上に精度の高い測定を行うことができた。その結果、この表面を構成する非対称ダイマーが明確に観測され、しかも、この振動相関熱散漫散乱法が0.1Åという高い精度で表面構造を直接観測できる手法であることが明らかになった。この結果については、学術雑誌に発表済みである。また、異種原子が吸着した表面の例としてSi(111)√3x√3-In吸着表面に振動相関熱散漫散乱法を適用した。この場合、異なる原子は異なった散乱因子を持つために、得られる原子像が本来の位置からシフトすることが予想される。そこで、測定した振動相関熱散漫散乱パターンを計算で求めた散乱因子で修正する手法を考案した。この修正方法を用いることで、この場合でも0.1Åという高い精度で表面構造を直接観測することに成功した。この結果についても、学術雑誌に発表済みである。
|