Si(111)7x7超構造表面上に金属Inを堆積させると、In蒸着量の増加に伴って√<3>x√<3>構造、√<31>x√<31>構造、4x1構造、そして√<7>x√<3>構造が出現することが知られておいるが、このうち4x1構造に注目して表面1次元物性が出現するのではないかと予想してその物性解明を行った。具体的にはIn/Si(111)4x1構造を100K以下に冷却したところ、4x2超構造が出現した。この表面を角度分解光電子分光で測定したところ、Inに起因すると思われる3つの表面準位が観察され、特にM3準位はちょうどブリュアンゾーンの半分のところでフェルミ面を横切っており、1次元金属的な挙動を示した。また明瞭なフェルミ端を示していた。しかし、100K以下で出現した4x2超構造においては約40meVのギャップが観測され、絶縁体的であった。すなわち表面1次元系で初めて金属ー絶縁体転移(Mott transition)が観測された。表面フェルミ面を調べたところ、このM3準位は完全なネスティングを示すことも判った。 さらにIn蒸着量が大きな√<7>x√<3>構造について角度分解電子分光によって電子状態を調べたところ、この系はIn金属の2次元金属相であることが判明し、√<3>x√<3>構造が半導体的であるのに比べて顕著な違いが見られた。 以上、In/Si(111)表面新物質相の電子状態を角度分解光電子分光によって明らかにし、相転移との相関を明らかにした。
|