1)水および同位体水(H_2O、D_2O、H_2^<18>O、D_2^<18>O)のTHz領域のラマンスペクトルを測定して解析した。慣性項と熱浴側のメモリー効果を実効的に取り込んだ二状態遷移模型(MRT模型)に基づく緩和関数と減衰振動子2個でスペクトルを極めてよく再現できた。この解析から、190cm-1モードは、水分子5個からなる四面体的構造における酸素原子間の伸縮振動モードである事、50cm-1のピークは水分子同士の変角振動モードとMRT模型での緩和モードの一部になっていることがわかった。 2)H-water(H_2O、H_2^<18>O)の緩和時間は、D-water(D_2O、D_2^<18>O)の緩和時間に比べて常に短いことがわかった。これらの緩和時間のArrhenius plotは、どの同位体水でも約300Kで折り曲がりが見られ、この温度付近で水素結合の状態変化がある事がわかった。 3)エタノール/水二成分系のTHz領域のラマンスペクトルを測定し、解析した結果、分子間振動モードが主体の40cm^<-1>以上の領域のスペクトルは、すべての濃度で、純物質の和スペクトルで再現されたが、緩和モードが主体の40cm^<-1>以下の領域では、実測スペクトルと和スペクトルの間で系統的なずれがあることが明らかになった。このずれの積分強度の濃度依存性は、水のモル分率0.6付近で極大を持つ。また、0.5cm^<-1>以下の領域で、レーリー散乱の成分とブリュアン散乱の成分の強度比、(Landau-Placzek比)を濃度に対してプロットすると、水のモル分率0.8付近で鋭い極大を示すことが明らかになった。これは、超音波吸収から得られている、濃度揺らぎの最大の濃度にも対応している。これらの解析をメタノールと1-プロパノール、2-プロパノールについても適用し、それぞれのアルコール水溶液系における、分子レベルでの混合の均一性について議論した。
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