研究概要 |
不整合相転移点近傍での空間分解ラマンスペクトルの解析 SiO_2の不整合相からα相へのLock-in転移は一次の相転移で約0.7Kの熱履歴を持つため試料中にあるわずかな温度勾配で不整合相とα相(我々のモデルではFog-Zoneと呼ぶ第3の相)が共存する.このことをわれわれは目視観察から確認した.中性子回折を始めとするこれまでの様々な実験では温度のみをパラメータとしているため試料中の複数相の共存が実験の解釈を混乱させていた可能性が大きい.本研究では結晶に一様で一定の温度勾配をつけ複屈折と目視観察でその領域を確認しながら,ラマンスペクトルの空間依存性を測定をした.その結果,Ti(satelliteが明瞭に現れる温度)以上でのβ相では340cm-1の光学モードは現れなかったが, 4cm^<-1>にピークを持つブロードな成分が現れることが見いだされた.その積分強度の温度依存性はは明らかにTi+20KからLandau理論からの予測がはずれることがわかった.さらにFog-Zoneでのラマンスペクトル近傍のm-zoneともα相とも異なることがわかった.これらの事実は新モデルを支持する結果である. この実験のための光学高温炉のヒータの巻き直しのために約30万円を要した.これらの結果は3rd Asian Meeting on Ferroelectricty (Hong Kong,Dec.2000において発表した. 不整合相の分子動力学計算による新しいモデルの検証 シリカ(SiO_2)に対するTsuneyukiポテンシャルは系の物性をよく再現することが知られている.このポテンシャルを用いて我々は水晶ではどのような相が安定であるか.そもそも変調構造が現われ得るかを12倍の拡大単位胞を用いたMD計算によって確認した.その結果は水晶の不整合相転移は,Γ点近くでsoft化が起こるのではなく,むしろより大きなk=b/3近傍でphononのソフト化がおこる可能性が高いことを示した.Jour.Phys.Soc.Japanに掲載されている.
|