非晶質半導体は長距離には無秩序であるが、原子間結合長や結合角のような短距離には秩序が保たれており、その間の中間的な数10nm程度の距離にわたる中距離構造が重要である。たとえば光結晶化は光照射により直ちに起こるのではなく、光照射中のある潜伏期間をおいてから結晶化が進行する。おそらく、潜伏期間には比較的大きな秩序構造が発達し、大きな揺らぎが非晶質の中に生じているはずである。本研究は光結晶化過程の初期に非晶質の中にある中距離構造の揺らぎ、フラクタル性、といった局所的な個性の存在を検知することを目的とする。 本年度はそのための実験装置の作成と測定を行った。顕微光学系を用いたレーリー散乱測定では、サブミクロンオーダーの空間分解能ではアモルファス物質の個性を検知することが困難であった。一つには電子状態の広がりが構造揺らぎより広いためと思われる。そこで光学系をラマン散乱測定が可能なように改造し、ネットワーク振動を測定できるようにした。さらに液体ヘリウム温度での測定も可能となるように顕微測定用のクライオスタットと組み合わせた装置を作成した。
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