共鳴発光体の周期構造として、石英基板の上に作製したグレーティング構造に有機無機ペロブスカイト化合物の一種である(C_6H_5C_2H_4NH_3)_2PbI_4(PEPIと略称)を用いた。これをジメチルスルホキシドに溶かして、周期構造を持った基板の上にスピンコートし、さらに保護/クラッド層としてポリスチレンをスピンコートして試料を作製した。これらの試料ではグレーティングによる鋭い吸収構造が観測された。この幅からQ値は200程度と見積もられる。 1次元グレーティング構造では共鳴発光がみられる試料について、サブピコ秒パルスで励起し、その発光スペクトルを光カーゲート法で時間分解した。グレーティングがない場合の試料では40Kにおける自由励起子の発光寿命は6ps程度であり、温度が上昇すると100Kまでは温度に応じて寿命が延びる。グレーティングがあって共鳴条件を満たすと各発光体の位相が定在波によって結合され、巨視的なコヒーレンスが生じて、発光寿命が短くなることを期待したが、結果は予想に反してむしろ10%ほど長くなった。H12年度では寿命が短くなる条件を数値計算を行い再検討する。 2次元正方グレーティング構造では入射角度を変えた透過スペクトルの測定から分散関係を調べた。2次元構造に特徴的な群速度の遅いモードが観測された。また凸と凹の割合が1:3および3:1の試料を作製し、光と共振器モードの結合の深さが逆転することを見出した。(1:3の試料で強く結合するモードは3:1の試料では弱い。)これは内部におけるモード電場の対称性の違いによって説明することができる。 グレーティングに非対称に物質を蒸着することにより、入射角度に対して非対称な透過が得られることを実証した。物質としては分子性結晶であるトリス(8-ヒドロキシキノリン)アルミニウムを用いた。
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