研究概要 |
本研究ではチタン酸バリウム(BaTiO_3),ロッシェル塩(NaKC_4H_4O_64H_2O),3酸化タングステン(WO_3),超急冷法により作用した非晶質チタン酸鉛(PbTiO_3)ならびにチタン酸ビスマス(Bi_4Ti_3O_<12>)の5種類の試料を用意して,主に原子間力顕微鏡を用いてその表面の観察を行った.物質ごとに得られた結果をまとめる. 1)BaTio_3では温度を130℃以上から0℃までの変化させたときの表面変化が可視化された.120℃付近の立方晶一正方晶系の相転移転(キュリー点),約5℃に存在する正方一斜方晶系の相転移転で,90度分域の生成消滅の過程がとらえられた.表面の傾斜角から格子定数の比を見積もり,回折学的手法で得られているデータとの比較がなされ,よい一致をみた. 2)ロッシェル塩では24℃付近の斜方晶一単斜晶相転移に注目して,単斜晶分域の形成をみたが,明確な温度依存性が初めて測定された.ただし定量的な測定は試料の示す顕微な潮解性のために困難であった。この点に関してまだ今後の研究が必要である. 3)WO_3では,まず室温(25℃前後)において,斜方晶系,単斜晶系の分域が観察された.次に温度を低下させることにより17℃以下の三斜晶系の分域による表面形状の変化が観察された.特に三斜角の温度依存性の様子を定量的に観察することにより,その相転移の1次性が実証された. 4)非晶質PbTiO_3では,ガラス転移が約600℃,結晶化温度が約650℃であり,これらの温度を目安に熱処理を実施して表面変化を調べた.結晶化温度以上ではグレイン成長が観察されグレイン内の分域の様子も可視化された.表面固さ分布を可視化してガラス温度以下の熱処理でも固さ分布が変わることを見出した. 5)非晶質Bi_4Ti_3O_<12>ではガラス転移が540℃,結晶化温度が600℃付近であった.この場合の結晶化ではBi_2Ti_2O_7という中間相が現れることを見出した.固さ分布の変化も4)と同様の結果を得た.
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