正スピネル構造をもつイリジウム新硫化物CuIr_2S_4は、226Kで結晶変態を伴う急激な金属-絶縁体転移を示すことを我々の研究室で発見した。金属-絶縁体転移の機構解明に資する精密な実験を遂行するために、長年の課題である良質単結晶を育成することに鋭意取り組んできた。その結果、気相化学輸送法では相変わらず単結晶育成には成功しなかったが、フラックス法にて単結晶を育成することに初めて成功した。研究費により、電気炉の制御をより高精度化することができた。薬品、石英管、ガスならびに耐熱部品等の消耗品の購入により、継続的に単結晶育成に取り組むことが可能になった。その結果、約1mm角の大きさの金属光沢のある8面体をした美しい単結晶が得られた。 育成した単結晶の質を種々の分析により評価して、物性測定の実験結果と試料の質の関係が明らかになる段階まで、種々の実験のアプロ-チをしている。磁性に関する実験において、単結晶にすることにより、温度誘起の金属-絶縁体転移が粉末の場合よりもシャ-プになることが明らかになった。現在、光電子分光等の実験も展開している。
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