正スピネル構造をもつイリジウム新硫化物CuIr_2S_4は、約230Kで結晶変態を伴う金属-絶縁体転移を示す。金属-絶縁体転移の機構解明に資する精密な実験を遂行するため、長年の課題である良質単結晶を育成することに鋭意取り組んできた。その結果、本研究プロジェクトにおける研究費支援により初期の目的を順調に達成することができた。フラックス法により、単結晶を育成することに初めて成功した。約1mm角の大きさの金属光沢のある8面体をした美しい単結晶が得られた。真空排気系の整備を行った。薬品、石英管、液体窒素、液体ヘリウムならびに耐熱部品等の消耗品の購入により、継続的に単結晶育成および低温物性測定に取り組むことができた。現在、フランスのグルノーブルの研究所にて我々の育成した単結晶を用いて精密な結晶構造解析の実験が行われている。さらに、光電子分光等の実験や、ラマン散乱の実験が実施されている。現時点では、1mm以上の大きいサイズの良質単結晶育成には成功していないので、大きな結晶を育成できるよう継続して努力している。なお、関連物質としてCuTi_2S_4の単結晶、およびCuZr_2S_4の単相の焼結試料の合成にも成功している。
|