本研究は、最近多くの注目を集めている四重極相互作用に関し、実験的側面からその本質に迫ることを目的として行われた。最近の四重極相互作用研究で注目を集めている物質の一つは我々が長年研究を行ってきたCeB_6である。CeB_6において四重極相互作用を担っている4f電子はCe当り1個である。一方Tmは4f電子を13個持っており、f状態が14個の電子で一杯になることを考えると、CeとTmはまさに相補的関係にあるわけで、大変重要な研究課題を提供することが期待される。しかしながら、TmB_6は常温・常圧では存在が確認されていない物質である。我々はこの隘路を打破する方法を見出した。CeB_6はLaによる希釈でも近藤シングルイオン的性格が変わらず、むしろそれらの混晶系で四重極相互作用に関するいろいろな新しい知見が得られていることから、このようなCe_xLa_<1-x>B_6に対比させ得る物質としてのTm_xLa_<1-x>B_6の研究が重要であるとの結論に達し、本研究の目的を達成するための対象物質とした。我々は本研究で、フローティング・ゾーン法によりTm_xLa_<1-x>B_6及びTm_xYb_<1-x>B_6の大型単結晶の作成に成功した。X線による解析では単結晶がヘキサボライド相にあり、純良結晶であることを確かめている。電気抵抗の温度変化測定によると、例えばTm_<0.25>Yb_<0.75>B_6においてはT=7.5Kで、Tm_<0.25>La_<0.75>B_6においてはT=4.5Kで急激な抵抗減少が見られるが、25%のTmで磁気的にオーダーするとは考えにくいので、四重極オーダーの可能性が非常に高い。これらの相転移は磁化測定においても確認されている。本研究によりこのような興味ある結果が出現しつつあり、比熱、磁化、中性子散乱等の総合した実験推進が不可欠となった。
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