トレリス格子混合原子価バナジウム酸化物の特異な電子状態に関する理論的研究

2000 年度 実績報告書

• 研究課題/領域番号: 11640335
• 研究機関: 千葉大学
• 研究代表者: 太田 幸則 千葉大学, 理学部, 助教授 (70168954)
• キーワード: 強相関電子系 / バナジウム酸化物 / 混合原子価 / 電荷秩序 / 電荷ゆらぎ / トレリス格子 / NaV_2O_5 / 光学伝導度

研究概要

トレリス格子構造を持つ混合原子価バナジウム酸化物α'-NaV_2O_5およびその関連物質の、電荷の自由度が示す特異な振る舞いの解明を行った。特に、次の5つの課題に関して研究を進めてきた。1.特異な電荷ゆらぎの発現機構、2.電荷秩序化の機構、3.スピン・ギャップの発現機構、4.欠損系の伝導機構、5.関連物質への理論の展開。特に平成12年度は、前年度までの研究から浮上してきた次の課題について研究を進めた。1.一様スピン帯磁率の温度依存性が、ボナー・フィッシャー曲線として知られる1次元ハイゼンベルグ系の帯磁率の温度依存性からずれる理由、NMR緩和率1/T_1の温度依存性が特異な振る舞い、およびハイトラーロンドン絶縁体領域での電荷ゆらぎと電荷秩序領域での電荷ゆらぎの基本的な差異を解明するため、1次元ハイゼンベルグ模型にこの系特有の電荷のゆらぎを取り入れた模型の構築を行った。またその模型の磁場に対する応答を明らかにするため、新しい量子モンテカルロ法のプログラム開発を行った。2.トレリス格子ハバード模型の光学伝導度スペクトルを平均場近似に基づいて計算し、実験で観測される高温相の特異な振る舞いの起源を考察した。また、関連するPrBa_2Cu_4O_8におけるCuO2重鎖の光学伝導度スペクトルの平均場計算を行い、その特異性について考察を深めた。3.最近新物質として注目され、その特異な物性が実験的に明らかにされつつあるβ相バナジウム・ブロンズに関する研究を進めた。この物質については、今のところ結晶中のどのサイトが本質的役割を果たしているかさえ明らかになっていない。本研究では、イオン結晶模型の立場に立ち、電荷分布のマーデルングエネルギーを計算することにより、可能な電荷分布の可能性を提案した。

研究成果

• [文献書誌] S.Nishimoto,M.Takahashi,Y.Ohta: "Electronic states of the dimerized Hubbard and t-J models for low-dimensional organic superconductors"Physica B. 281-282. 953-954 (2000)
• [文献書誌] S.Nishimoto,Y.Ohto: "Charge dynamics of the coupled anisotropic t-J ladders :"Physica B. 281-282. 646-647 (2000)
• [文献書誌] S.Nishimoto,M.Takahashi,Y.Ohta: "Charge Gap of the Quasi-One-Dimensional Organic Conductors : A Density-Matrix-Renormalization-Group Study"Journal of the Physical Society of Japan. 69・6. 1594-1597 (2000)
• [文献書誌] S.Nishimoto,T.Yamaguchi,Y.Shibata,Y.Ohta: "Effects of intersite repulsion in the one-dimensional dimerized Hubbard model at quarter-filling"Journal of Physics and Chemistry of Solids. 62. 289-292 (2001)
• [文献書誌] S.Nishimoto,Y.Ohta: "Metal-Insulator transition in the acentric Hubbard ladders at quarter filling : a self-doping mechanism"Journal of Physics and Chemistry of Solids. 62. 277-280 (2001)
• [文献書誌] S.Nishimoto,Y.Ohta: "Madelung Energy and Charge Ordering in β-Phase Vanadate"Journal of the Physical Society of Japan. 70・1. 309-310 (2001)