巨視的量子トンネリング(MQT)による加圧下超流動^4Heでの固体核生成は、LifshitzとKagan(L-K)により、理論的に予言された。そこでは、固体核の生成が、「秩序」 および「密度」の双方の変化によってなされ、そのいずれかが先に起こるかによって、観測される核生成率Wの圧力依存性に現れる指数g: W(P)αexp(-δP^g) (1) に違いが現れることを明白に述べている点で、極めて興味深い。それは、古典液体の固化では観測されることのない、MQT現象による、一次相転移研究の新しい切り口になり得るからである。 最近、圧力下に置いた超流動^4Heにおいて、巨視的量子トンネリング(MQT)によるものと思われる固体核の生成が観測され、話題を呼んでいる。そこで観測された指数g=1は、L-Kによれば、「秩序変化が先に起こる場合」に相当する。 我々は、簡単なモデルを考え、実際に超流動^4Heでは、先に秩序変化が現れ得ることを示し、ロトンギャップが消失する圧力(それは、秩序変化の現れるスピノーダル点に相当する)近傍で、g=1となることを示した(出版準備中)。 また、密度が先に変化する場合についても、新しい可能性を探った。すなわち、実際の固体核は壁上で起こるのであるから、半空間についての核生成のダイナミクスをきちんと考察すれば、予想より低い過加圧を説明できるかも知れないという試みである。この場合、核の接触角が、新たな力学変数としてはいってくる。この効果は、静的な接触角(Youngの接触角)が0に近い場合には非常に大きく効くものの、ヘリウムの実験のように90度近い場合には、ほとんど影響しないことがわかった。これについては、本研究課題の成果として、既に出版された。
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