研究概要 |
超流動ヘリウム4の固化について、定性的に信頼の置ける(ある場合には、定量的にとも言える!)モデル自由エネルギーを得た。それは、超流体-固体転移に伴う密度変化と、並進対称性の破れを表す変数の2つの変数を力学変数として含む。 このモデルは,少なくとも、融解圧以下の既存の測定については、ロトンマス、ロトンギャップの圧力依存性は大変良く合い、融解圧における超流体-固体境界の厚さや界面エネルギーも良い一致を見せる。さて、このモデルは、並進対称性の破れを表す秩序変数を明白に含むので、固体相までカバーする。従って、最近実験がはじめられた「融解圧以上」の、準安定な超流体の物性を予見する。それを信頼するとすれば、 (1)固体への転移にあたって、密度変化より先に並進対称性の破れが起こらなければならない。 (2)スピノーダル圧(これ以上の圧力では、超流体は不安定になる)は、融解圧+53barであり、このとき超流体のロトンギャップは消失する。 (3)融解圧における超流体体-固体のエネルギー密度のバリアは380mbarであり、その値は圧力の変化について鈍感である。 (1)は、従来の固体核生成の理論モデル(密度を単一の変数として含むモデル)を、少なくとも超流動4Heにおいては、断固として退ける結果である。また(3)の、エネルギー密度のバリアが380mbarということから、過加圧状態の超流体では、10Å程度のサイズのセミマクロな領域では、超流体と固体の線形結合が起こっているのではないかと考えられ,「量子レマーネント状態」という、固体核が形成される元となる,種固体の量子版のような新しい物理概念に至る。 以上、要約すると,実際の液体-固体転移を良く記述するモデルを発見したということと、それを元にして、熱的、および量子的固体核生成の実験の一部が解釈できること、そしてそれに関連した新しい概念が生まれつつあることを示した。
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