カルコゲン合金の物性

1999 年度 実績報告書

• 研究課題/領域番号: 11640343
• 研究機関: 金沢大学
• 研究代表者: 樋渡 保秋 金沢大学, 理学部, 教授 (20019491)
• 研究分担者: 池本 弘之 富山大学, 理学部, 助手 (20262496) ; 星野 英興 弘前大学, 教育学部, 教授 (30001861) ; 遠藤 裕久 福井工業大学, 工学部, 教授 (40025284) ; 小田 竜樹 金沢大学, 理学部, 講師 (30272941) ; 井川 淳志 京都大学, 大学院・理学研究科, 助教授 (80243004)
• キーワード: 半導体-金属転移 / ヒ素カルコゲナイド / 液体カルコゲン

研究概要

以下の研究成果を得た。
(1)液体Se_<20>Te_<80>,Se_<30>Te_<70>及びSe_<40>Te_<60>(測定温度範囲400〜550℃)についてEXAFS測定を再度試み、転移点近傍の局所構造変化を検討した。その結果Te-Teボンドが熱的に切断されやすく、Se濃度の増加と共に、高温でTeは鎖のターミネーターとなる傾向があることを得た。
(2)液体As-Te混合系(20,30,40at.%As)のEXAFS測定を行い、500℃近傍で3配位のAs原子と2配位のTe原子からなるネットワーク構造が崩壊し、As原子が2配位、Te原子が1配位で鎖端原子となる1次元鎖状構造へ転移することを見出した。この混合系で怒る半導体から金属への転移がこの相転移に関係することを明らかにした。
(3)液体Se-Teについて磁気抵抗の測定を行った。半導体領域(100Ω^<-1>cm^<-1>以下)では磁気抵抗は観測されないが、金属化が始まる100Ω^<-1>cm^<-1>以上になると正の磁気抵抗が出現する。温度が上昇して伝導度が大きくなるにつれて磁気抵抗の値も増加し、1000Ω^<-1>cm^<-1>以上の領域になると急速に大きくなる。このことは伝導に寄与するキャリアは、半導体領域では1種類であるが、金属化とともに新たに出現することを示唆する。
(4)結晶As_2Te_3に対し、第一原理の電子状態計算を行った。その結果bandgapが約0.3eVの半導体であることがわかった。又、液体A_2X_2(A=S,Se:X=Cl,Br)の静的動的構造、分子動力学シミュレーションにより考察を行った。
(5)Full-potential linearized augmented plane wave(FLAPW)法を用いて、セレンの高圧相の全ての構造に対して計算を行った。各原子に働く力も計算し、原子構造の最適化に用いた。そのようにして決定された原子構造で、トータルエネルギー、電子状態密度、バンド分散曲線、電荷密度分布などを計算し、電子状態と原子構造の関係を調べた。又、本研究では交換相関エネルギーの部分に対して、局所密度近似(LDA)だけでなく一般化された密度勾配近似(GGA)でも計算し、この効果も調べた。

研究成果

• [文献書誌] Y.Ohmasa,M.Yao and H.Endo: "Pressure-induced phase transition in Te-Se system"Rev.High Pressure Sci.Journal. 7. 248-250 (1998)
• [文献書誌] I.Yamamoto,Y.Ohmasa and H.Endo: "Optical properties of selenium order pressure"J.Non-Cryst.Solids. 250-252. 419-422 (1999)
• [文献書誌] Y.Kawakita,M.Yao and H.Endo: "Short and long bonds in liquid tellurium"J.Non-Cryst.Solids. 250-252. 447-452 (1999)
• [文献書誌] 星野英興: "ヒ素カルコゲナイトにおけるガラス移転のダイナミックス"NSG Found.Mat.Sci.Eng.Rep.. 17. 198-206 (1998)
• [文献書誌] H.Hoshino,T.Miyanaga,H.Ikemoto and H.Endo: "The electronic and structural change in the super cooled liquid and glassy"J.Non-Cryst.Solids. 250-252. 478-482 (1999)
• [文献書誌] T.Miyanaga,H.Hoshino,H.Ikemoto and H.Endo: "EXAFS studies of liquid chalcogenides"Jpn.J.Appl.Phys.. 38. 560-563 (1999)
• [文献書誌] T.Miyanaga,H.Hoshino and H.Endo: "EXAFS study of silver clusters in zeolites"J.Synchrotron Radiation. 6. 442-444 (1999)
• [文献書誌] K.Nakamura and A.Ikawa: "Interchain Interaction in Semiconducting Liquid and Amorphase Se"Prog.Theor.Phys.Supplement. (印刷中).
• [文献書誌] M.Geshi,T.Oda and Y.Hiwatari: "The Electronic Structure of a High Pressure Monodinic Selenium and the Structural Phase Transition"J.Phys.Soc.Jpn.. 68. 3341 (1999)
• [文献書誌] T.Oda and Y.Hiwatari: "Order-N Tight-Binding Molecular Dynamics Simulation with a Fermi Operator Expansion Approach: Application to a Liquid Carbon"J.Phys.: Condens.Matter.. (印刷中).