研究概要 |
グリーン関数法を用いた電子状態計算方法のパッケージを開発した.超格子の電子状態計算.金属人工格子,ナノ構造磁性,希薄磁性半導体などの各分野で,超格子構造の示す新しい物性が注目を集めている.これらの構造は,系のサイズが大きく,不規則性を内在し,またドーピング効果が重要であるという点で.従来のバンド計算では困難がともなう場合が多い.グリーン関数法はこのような系にも問題なく適用される点で期待されている.KKRパッケージおよびKKR-CPA-LDAパッケージを整備することによって ・(Ga_<1-x-y-z>Mn↑_xMn↓_yX_z)As混晶,希薄磁性半導体超格子(In_<1-x-y>Mn↑_xMn↓_y)As/(Al_<1-z>Be_z)Sb,(Cd_<1-z-y>Mn↑_xMn↓_y)Te/(Al_<1-z>Y_z)(As_<1-w>Z_w)の電子状態をKKR-CPA法および密度汎関数法の局所近似にもとづいて第一原理的に計算した.この系は超格子であり,かつ上向きおよび下向き局所磁気モーメントをもつ2種類のMn,ドーピング効果を得るための種々の不純物原子が入った不規則混晶,合金である.このような極めて現実的な系に対しても問題なくKKR-CPA-LDAパッケージを働かせることに成功した. ・Cr/Fe超格子の電子状態と磁性をKKRパッケージを用いて計算した.特に,並列化を行って,高速計算を可能にした.並列化は各エネルギーと各k点について独立した計算がなされていることから,その部分のみの並列化をはかった.ベクトル化による加速と相まって10ノードの並列化の結果全体として約300倍の加速を達成することができた. ・FeNi,FePt,CuZnAl系に対して,KKR-CPA-LDAパッケージを用いて電子状態の計算を行うために,以下の拡張を行った.CPAにおいては電荷移動の効果は平均として局所的な電気的中性をやぶらないために静電エネルギーに寄与しない.このことは,電荷移動の強い系では系統的な全エネルギーの誤差を生み出す.シングルサイト近似のもとで,このような不都合はある程度避けられないが,状況を改善するために,電荷移動は最近接原子程度の距離で遮蔽されるとして,補正を施すことができる.必要に応じてこのような遮蔽がなされるようにプログラムの改良を行った.また,完全に不規則ではなく規則構造からの揺らぎとしての不規則状態を表すオーダーパラメータを導入し部分不規則状態を容易に計算できるようにした.
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