研究概要 |
CoO_2平面とCU_2S_2層を有する新規な層状遷移金属オキシ硫化物(Sr_2CU_2CoO_2S_2)のC0O_2平面には,今のところ,Cuは50%まで,Znは20%までドープできる.XPS測定により,Cu_2S_2層のCuイオンは1価的,CoO_2平面のCoイオンは2価的であることから,本物質の磁性はCoO_2平面のCo^<2+>イオンに起因している.さらに,CoO_4クラスターについての量子化学的XPSスペクトル計算により,CoO_2平面は電荷移動型とモットハバード型の境界近傍に位置する電子状態をとっていることが分かる.母物質の磁化率は,磁場中冷却時と零磁場冷却時に,80K以下で履歴が観測され,80K以下ではスピンが揺らいでいるグラス的状態にあると言える.また,常温から磁場をかけて転移温度以下に冷却し,その後磁場を0にする過程で,10K,20K,30Kにおいて磁化の時間依存性を測定したところ,高温超伝導関連物質La_<1.96>Sr_<0.04>CuO_4において見られた引伸ばされた指数関数型の長時問緩和現象が観測でき,スピンのグラス的振舞いの存在を裏付けている.Znを10%ドープするだけで,磁気的性質は劇的に変化し,グラス的振舞いは消失してしまう.一方,Cuを数十%ドープしても,系の磁気的性質はZnドープ系ほど劇的な変化は起こらない.しかしながら,電気物性の観点から見ると,半導体的Sr_2Cu_2CoO_2S_2に,Cuを40%以上ドープすると,200K以上で金属化し,系が金属に近づいていることを示唆している.ドーパントのXPS測定により,Znが2価的,Cuが1価的であることから,Cuドーピングは系に対して正孔ドープ的な役割を担っていることを暗示している.今後,SrサイトのLaやNa部分置換によりキヤリアーをドープした系の物性測定と比較検討することにより,新規な層状遷移金属オキシ硫化物の機能発現機構と物性制御要因を明らかにしてゆく.
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